性病とは性行為を介在して感染が拡大する感染症のことを指しています。
第二次世界大戦後にはしばしば流行が見られましたが、公衆衛生環境の向上により暫くの間患者数は少数で推移してきました。
しかし2000年代に入ると長期的低減傾向には歯止めがかかるようになり、患者数も次第に増加傾向が見られるようになっています。
厚生労働省の調査によると性病の新規感染者の年代は20代・30代・40代が患者のコア層で、女性に限ってみると20代の患者数はその数でも増加のペースでも状況が深刻化しつつあると推定されています。
2015年のデータでは20代女性の性病患者数は前年比2.3倍に上っているほどです。

中でも4大性病のひとつに数えられる梅毒患者数の増加は深刻です。
国立感染症研究所への届出数の推移をみると2013年では1200人強だった登録数が2017年には6000人に迫る勢いです。
つまり、わずか5年ほどのタイムスパンで患者数が5倍ほどに急増しており、戦後長期間に渡って患者数が少ない時期が継続していた状況は一変し、性生活を持つ人であれば誰もが警戒するべき性病の一種です。

そもそも梅毒はトレポネーマと言う細菌が性行為を介して感染する感染症です。
トレポネーマは水分や湿度は一定程度に維持され、適温の環境に好んで生息しています。
性器粘膜はこの条件をすべて提供してくれるので、格好の生育環境になっているのです。
しかし粘膜は何も性器だけではありません。
口唇から内部は口腔内部はすべて粘膜に覆われています。

粘膜とは外界とつながる中腔性気管の内部を覆う膜のことで、絶えず粘液が分泌されているのが名前の由来です。
断面で見ると上皮層とその下の固有層からなっていますが、この構造は基本的にどこも類似しています。
従ってトレポネーマも性器以外の口腔内部や扁桃腺などに感染しても繁殖することが出来るので、扁桃炎といった性器以外の箇所で症状が初発する場合もあります。

性行為でない接触でも感染のリスクがある

確かに粘膜である以上性器以外の部位にも感染する可能性があることは納得できますが、性行為を介在にすることを当然の前提にしています。
にも関わらず口腔内部の扁桃炎の発症などが見られるは何故でしょうか。

それは、トレポネーマに感染した粘膜との接触をもたらすものであれば性行為に限らず、性的接触を持つ行為すべてに感染のリスクが隠れていることになります。
場合によってはキスをするだけで梅毒の感染を広げる可能性もあるのです。

梅毒の初期症状は痛みの伴わない硬い発疹が、トレポネーマが付着感染した部位に発生するのが一般的です。
小豆大から親指の指先ほどのサイズのしこりとして発見されることが多いとされていますが、自然に消えてしまうこともあり気付きにくいのが特徴です。
これは自らの肉眼で確認できる性器に発生した場合であり、トレポネーマが口腔内部に感染して梅毒性の扁桃炎を発症して小豆ほどのしこりが出来ても痛みなどの自覚症状に乏しいので、一層気付きにくいと言うのが現実です。

仮に扁桃炎の診断を受けて抗生物質などの投与を受け、一時的に消失などの効果が見られても十分な投与期間が確保されていないので完治しにくい特徴を持っています。
完治しにくい扁桃炎の原因を詳しく検査して初めてトレポネーマ感染を原因とする梅毒性の扁桃炎と確定診断を受けることもあるのです。
後になって振り返ると性的接触が原因だったと判明することも珍しくないといえます。
梅毒は一度発症すると進行を続け全身に感染は広がり症状も悪化していきますので、酷くなり振り返ると心当たりがあることが無いように性生活のある人は性器の異変だけでなく扁桃炎などにも注意を払うことを忘れないで下さい。