扁桃肥大と診断されると以前は切開手術により摘出する治療法が一般的でしたが、最近の臨床現場では扁桃切開摘出手術の適応対象は厳密に検討されるようになっています。
肥大は細菌感染などが慢性化することで発生することがよく観察されるので、治療の基本は抗生物質の適切な投与によるコントロールになります。

そこで扁桃切開摘出手術が適応になるのは、睡眠時無呼吸症候群の症状が見られる場合や、炎症を頻繁に繰り返していて高熱時などに血尿が出たりと、IgA腎炎などの腎機能障害のリスクが高い場合、肥大の程度が深刻で嚥下困難で食事などに支障が出ている場合や気道閉塞が懸念される症例、などに限定されます。

ところで扁桃肥大の治療方針を決定するにあたっては、病状を正確に把握するのが不可欠の前提になります。
扁桃肥大の検査は肉眼での視診に加えて、睡眠状況や日中に眠気を覚えるかなどの問診や気道の状態を喉頭鏡などを用いて確認します。
肥大の程度が深刻な場合には、専用の検査装置を使用したり、血中酸素濃度などを自宅でリアルタイムで記録をとるなどの検査が併用されることもあります。

扁桃肥大の切開摘出手術は全身麻酔下で行い、開口した状態を維持するために専用の器具を口に装着して、手術のための手技を自由に行える空間を確保してから切開などを行います。
子供の場合はアデノイドを併発している場合も多いので同時に摘出することになります。
首回りなど外部からアプローチせず、口内から直接メスを操作するので術後は傷跡が残ることはありません。
扁桃周辺には聴器などにも隣接しているので中耳炎を併発している場合もあり、その場合は鼓膜チューブを留置する手術も同時に行われる場合もあるようです。

手術時間は1時間半ほどかかり、1週間から10日ほどの入院加療が必要になります。
全身麻酔下で手術を行うため全身管理を行うことが必要になるからです。
なお手術後1ヶ月ほど経過すれば咽頭部分の傷跡も粘膜が再生し回復します。

後遺症や医療ミスなどのデメリット

扁桃切開手術を受けることで睡眠時無呼吸症候群や嚥下困難、気道閉塞の危険などから開放されるのでメリットが大きいのは確かです。
しかし先ほど御紹介したように、扁桃切開摘出手術の適用対象は限定される傾向があります。
一昔前は扁桃切開摘出術は比較的頻繁に行われてきました。
そのトレンドが変化し医療者側が慎重な姿勢に転換した背景にはデメリットも無視できないからです。
医療ミスを指摘され裁判にまで発展した事例も存在しています。

具体的事例を通じて扁桃切開手術のデメリットを検討してみましょう。
患者は50代後半女性で、全身麻酔下で扁桃切開摘出術を受けた後、血圧の急上昇をきたし口腔内から術後出血が見られたため、全身麻酔を再度行い気管内挿管が試みられたものの出血により視野を確保できずに失敗してしまいました。
最終的には気管切開を行って気道確保したものの、呼吸停止状態が継続したため低酸素脳症を発症し深刻な意識障害をともなう脳障害が後遺症として残ってしまったというものです。

この事例では患者側が原告となり医師の治療行為により脳障害が残った点を医療ミスとして、損害賠償請求を求めて提訴されています。
裁判での争点は覚醒状態で気管内挿管を優先して行うべきであったのに、全身麻酔下での気管内挿管を選択したのは医療ミスにあたるか、にありました。
裁判では原告側の主張が認められ、損害賠償を命じる判決が下されています。

出血の止血と気道確保のいずれも深刻な事態が想定される極限の状況下での医師の判断の是非が争点となりました。
こういった深刻な状況と現に遭遇する事例があるので医療者サイドも扁桃切開手術に踏み切ることに慎重になっています。
手術を受ける患者側としてもデメリットも十分承知した上で判断する必要があると言えます。